RIP クリスチャン・ボルタンスキー氏
フランスの現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー氏が2021年7月14日に逝去されました。享年76。死因はがんだったそうです。
生と死をテーマに数々の作品を残してきたアーティストだけに、その訃報は大きな喪失感を伴います。もっと作品に触れたかった…と悔しさも感じずにはいられません。
実は、2022年春に宮城県南三陸町に開館予定だった震災伝承施設で展示制作を行う予定だったとのこと。聞けば聞くほど残念な知らせです。
生と死を問い続けたアーティスト
1944年、パリ生まれ。
映像、写真、彫刻、インスタレーションなど多様なメディアを用いて「記憶」「不在」「死」といった普遍的テーマに挑み続けました。
ビスケット缶、キャンドル、古着、数千枚の写真や名前など、無名の個人の痕跡を素材とし、人間の存在の儚さと尊さを表現。
ドクメンタ、ヴェネチア・ビエンナーレ、越後妻有トリエンナーレなど国際展にも多数参加。2016年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞し、フランスを代表する現代美術家として世界に知られました。
日本で出会えるボルタンスキー作品
ベネッセアートサイト「心臓音のアーカイブ」
2008年から続けられているプロジェクト。世界中の人々の心臓音を収集し、恒久的に保存・再生できる小さな美術館です。
自分自身の心臓音を採録して残すことも可能で、「生きた証」をアートとして刻む体験は忘れられません。
館内ショップではトートバッグやレターセットも販売されています。
豊島「ささやきの森」
森の中に無数の短冊が吊るされたインスタレーション。風に揺れる音とともに、亡き人への祈りや記憶を感じられる作品です。公開当初には本人によるアーティストトークも行われました。
越後妻有「最後の教室」
廃校となった小学校を舞台にした大規模インスタレーション。かつて学んだ子どもたちの不在を強く感じさせる空間体験は、まさに“死と記憶”を象徴する作品です。
最後に
二年前の大回顧展「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」が記憶に新しい方も多いはず。
あの展示を体験した人なら、今回のニュースにより一層の寂しさを感じているのではないでしょうか。
宮城県南三陸町で予定されていた新しい展示については、今後の続報を待ちたいと思います。
心よりご冥福をお祈りいたします。
追記|これ行きました
南三陸で出会ったボルタンスキー
2022年春に開館した南三陸311メモリアル(震災伝承施設)。
ここには、ボルタンスキーが最後に携わった展示のひとつがあります。
実際に訪れてみて感じたのは、「生と死を強く意識させる南三陸という場所だからこそ、彼の作品が心に深く響く」ということ。
震災の記憶と、ボルタンスキーが生涯を通して問い続けた「存在と不在」というテーマが、静かな空間の中で共鳴しているようでした。
作品自体は撮影NGですが、だからこそその場に立ち会ったときの空気や感情が、自分の記憶にしっかり刻まれた気がします。
