今年もう映画を観なくてもいい─映画『国宝』レビュー&登場演目かんたん解説

やっほ~、美術館好きNAOMIです!先日映画『国宝』を観てきました。昔歌舞伎にハマって一幕見席に通っていた身としては、公開を首を長くして待っていた一本。結果――見事に沼りました。以下、かんたん解説+推しポイントをまとめます。
1. 映画『国宝』とは?
公開日:2025年6月6日
上映時間:175分(PG12)
監督:李相日
配給:東宝
主演:吉沢亮(立花喜久雄)、横浜流星(大垣俊介)
ジャンルは“芸道×青春”。歌舞伎を舞台に、異なる境遇で育った二人の少年が出会い、やがて「国宝級」の役者へ成長していく物語です。
なんてったってお顔が国宝級の二人…宣伝の時から気になってましたよ。
2. 小説『国宝』概要と映画化のポイント
原作は吉田修一の同名小説(2018年)。上下巻700ページ超の大作で、戦後から平成までの歌舞伎界を背景に「芸に生きる宿命と孤独」を丹念に描き、毎日出版文化賞と芸術選奨文科大臣賞を受賞。映画は物語の骨格を活かしつつ、映像ならではの“舞台を体感するカメラ”で凝縮しています。
3. ネタバレなしストーリー&キャスト
あらすじ(ざっくり)
暴力団一家に生まれた喜久雄が上方歌舞伎の名門へ。才能でのし上がる喜久雄と、名家の俊介──友情はやがて宿命とぶつかり、二人は“芸にすべてを捧げる”選択を迫られる。
キャストと見どころ
・立花喜久雄|吉沢亮|“女形の到達点”を示す妖艶さ
・大垣俊介|横浜流星|己の業と闘う継承者(推し!)
・花井半二郎|渡辺謙|“芸道の鬼”とも呼ばれる当代随一の立役
4. 映画に登場する主要演目4つ
👉 ポイント
上記4演目は「女形が情念を身体で語る」代表格。映画では 目線・息遣い・肩甲骨の動き まで映し取るカメラワークが冴え、舞台を“体感”できる。
曽根崎心中
江戸時代の実際の心中事件を題材にした近松門左衛門の名作。〈生きて添われぬなら死んで添おう〉と決意する一夜を描く。劇場の闇を切り裂く光と所作が感情を語り、セリフより先に涙が落ちる。
藤娘
春爛漫、藤棚の下で藤の精が娘の姿となって舞う幻想的な舞踊。扇のさばきと首の傾げで“恋する乙女”の可憐さを表現。
二人道成寺
伝説の安珍・清姫をベースに、二人の踊り手がシンクロして踊る変化舞踊。“嫉妬の炎で鐘を焼き尽くす蛇”を完璧な同調で見せる緊張感。友情と宿命がせめぎ合う。
鷺娘
雪の夜に現れた白鷺の精の悲恋。ひとりの踊り手が“恋する少女→狂気→精霊の消滅”を演じ分ける儚くも過酷な演目。
4.5 鷺娘は“瀕死の白鳥”といとこ関係?
鷺娘が最後に“倒れて幕”となる演出は、20世紀にロシアバレエ〈瀕死の白鳥〉が日本に紹介された際に取り込まれたもの。オリジナルは倒れず終わるんです。
5. レビュー:なぜ“このあと何もできなくなる”ほど余韻が深いのか
- 芸と人生が完全に重なる瞬間を“見せる”映像
- 種田陽平(美術)×ソフィアン・エル・ファニ(撮影)の画作りは、光の粒子さえ物語にする。
- 俳優二人の“目と呼吸”の演技
- セリフがない場面ほど心が揺さぶられる。
- 世襲と芸術の矛盾を背負う物語構造
- 観る側は「才能か、継承か」という問いを突きつけられ、鑑賞後もしばらく日常に戻れない。
- 歌舞伎演目の“物語内メタファー”
- 曽根崎心中の決断=二人の友情の行方。演目を知るほど、映画の深度が増す。
6. まとめ:観る前/観た後におすすめの過ごし方
- 観る前:
- 原作小説の上巻だけでも読んでおくと人間関係がよりクリアかも。
- 演目名+簡単なあらすじをさらっと予習。
- 観た後:
- 予定は入れない。カフェで1–2 時間、余韻を味わう“空白時間”を確保。
- 舞台芸術ファンなら、国立劇場の歌舞伎資料館で演目の実物衣装や浮世絵をチェックするのも◎。
- リピートのすすめ:
- 二回目は“呼吸”に集中して観ると、俳優の緩急や間合いの妙が際立ち、さらに深く落ちる。
🎫 最後に一言
「もう映画館ではこれだけで十分」──そう思わせる作品は数年に一本あるかないか。迷っているなら絶対おすすめ。
そこに“芸が宿る瞬間”のすべてが詰まっているから。。。